閉鎖空間へようこそ 3

You:あなたはだれ?

 

???:わからないの

 

他にも似た状況の人がどこかにいるのかもしれない。

力を合わせればなんとかなるかもしれない。

しかし、意外にもその声はあっさりと答えを示してくれた。

 

???:でもここのことはわかる

???:ここは、だれかがここにいたいと

???:つよくねがってうまれたせかい

 

『そんなの、マンガやアニメじゃあるまいし…』

『これだってゲームだろ?なんでこんな…』

超常的な話に、不安の声が上がる。

 

???:のぞむなら

???:ここにいつづけることもできる

???:そんなせかい

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そこに いるの?

『そりゃいいや、死ぬまで遊べそうだ』

軽口をたたいた彼は隣のパートナーにたたかれた。

しかし、それは誰かがどこかでは思っていることだ。

口には出さずとも、心のどこかで。

自分もそうだった。

 

???:でもここにのこるということは

???:じぶんをうしなうということ

???:わたしもじぶんのなまえをおもいだせない

 

『えっ』

隣のフレンドが声を漏らした。

おそらく同じことに気が付いたのだろう。

現実の自分のことが霞がかかったかのようになっていた。

さっき食べた夕飯の味、立ちっぱなしの足のしびれ、

使っているスマホの色、嫌いな上司の名前。

試しにさっきまで駄弁っていたことを話し合ってみたが、

思い出せないことがいくつもあった。

 

???:かえるのはかんたん

???:ここにのこりたいとねがったひとが

???:かえりたいとねがえばいいの

 

???:あなたたちは

???:どうする?

 

 

 

『時間がない』

焦ったフレンドが軽口をたたいた一人に詰め寄った。

お互いが疑心暗鬼になっていった。

『君のせいで迷惑が掛かってるんだ』

『だれが、いったいこんな』

 

しかし、僕は一人、思い当たる人がいた。

 

「何かあったの?」

 

僕は声をかけた。

 

つづく