一歩

認められたいのは欲張りですか

好きを求めるのは欲張りですか

共感がほしいのは欲張りですか

 

誰もそんなこと思わないはずなのに

当たり前の気持ちなのに

どうして恥ずかしく思うのだろう

どうして怖くなるんだろう

 

指先のイモムシ 甘いコーヒー

ピカソの絵画 冷たいクラシック

 

君の好きなものは?

 

セミの抜け殻 割れたカップ

モノクロ写真 熱いメタル

 

君の切ないものは?

 

自分が好きなら

切ないなら

みんな一人だから

何をしても自分だから

君を教えて

 

この世界のだれかと

きっと重なる

たくさんではないかもしれないけど

誰かは見てくれている

 

楽しい夢は描け

寂しい夜は歌え

悲しい冬は綴れ

嬉しい雨は踊れ

僕は怖い

 

君の世界のすべてになったここが

君の心の半分になったその子が

 

今でなくなった時に

消えてしまった時に

 

君はこわれてしまうのではないか

世界のすべてを呪うのではないか

 

人を信じることをやめてしまうのではないか

 

この世界は仮想なのに

目の前のすべてがデータなのに

 

僕は怖い

僕もそうだ

 

夜空を見た 切なさに似て

 

言ってあげたいのに 綺麗ごとでも

言ってあげたいのに 何もできない

 

花は散る 雲は流れる

ながめるだけで それだけで

 

せめて僕は いつでも 誰かの

 

しるべにもならない 星でいいから

白昼の空の 星でいいから

僕は鳥

僕は鳥 飛べぬクイナ

世界は広く 見上げるのに夢中で

飛ぶ鳥をみて 走る鳥を見て 

憩う鳥を見て うらやましく

 

僕は鳥 漂うカモメ

風のままに 流されるように

行きつく島で 時折休み

羽一枚だけ 残していって

 

僕は鳥 さえずるスズメ

安らぐ止まり木 雨宿り

周りもスズメ 言葉は同じ

甘い時間 溶け合うように

 

僕は鳥 ささやくカラス

眺めるだけじゃ 物足りなくて

貴方の羽が 欲しくなって

心のささくれ 鏡は避けて

 

僕は鳥 沈むペンギン

冷たい海の 底を目指して

形は違えど 笑う人はなくて

探す自分は 心地が良くて

 

僕は鳥 旅するトンビ

どこにもいて 居場所はここで

きれいなタカに 近づきたくて

見下ろす景色 いとおしくて

本当は

ここでは思考しか残らない

顔も名前も地位も名声もなんにもない

そして性別すら大して意味をなさないのだと思った

 

リアルでは性別というのは常に大きな山のようで

男は男でしかなく、女は女でしかない

ゆるぎない 違いない

 

でもここは違った

心がそうありたいと思ったらそうなる世界では

その境界線はもはや見えなくなっていた

こうありたいと思ったその瞬間から

もう性のしがらみはなくなった

 

体を選んで、声を選んで

心は望むままで

じゃぁ本当の性なんて残るのだろうか

 

本当は男でしたって

心は可憐な花で

本当は男でしたって

言葉はルビーの玉で

本当は男でしたって

体はユリのようで

本当は男でしたって

大木の安らぎを求めても 

 

異性を求めるのは本能だろう

理屈では動かない

でもここでは本当の性別がどちらかなんて関係ない

掛け値なしに人の心を 魂を

そのものを好きになれる

 

どんな自分でも自由で

誰を選んでも自由で

それはきっと危うい自由で

いまにも崩れそうだけど

この自由の中に僕らは本当の「好き」という感情を

見つけるのかもしれない

 

本当は女でしたって

心は熱い炎で

本当は女でしたって

言葉は海の青で

本当は女でしたって

体はタカのようで

本当は女でしたって

一輪の花を求めても

 

どんな自分を描いても

どんな人を求めても

それはどこまでも自分で

正しさなんてなくて

心はとまらなくて

ありのままの自分を

いつまでも愛する自分でいて

ありのままの貴方を

そのままで愛する自分でいて

 

 

輪郭が消える

 

輪郭が消える

 

 

 

ここでは人の顔は見えない。

名前も知らない。

歴史もない。

評価もない。

声も変えられる。

性別すら曖昧だ。

 

残るのは魂だけ。

純粋な人間性

人の心がむき出しになる。

 

初めて一ヵ月。

アバターが馴染むのを感じた。

初めて二か月。

世界に人格が解けていくのを感じた。

 

世界に飛び込んだ時は人だった。

人の形をしていた。

でも、とけた。

残ったのは泡だった。

 

心は泡だ。

触れ合えばくっつき、離れ、膨らんで、しぼみ、はじけ、浮かび、消え、生まれる。

存在は希薄で、透けているようで、影は暗い。

 

 

輪郭が消える

 

 

ここは海だと思う。

たくさんの色とりどりの泡が浮かぶ海。

幻想的で、甘ったるい空気によどみ、息すら忘れる蜜のような海。

 

この海の中でいろんなものを見た。

島を見つけた人、船をつくる人、底を目指した人、空へはばたいた人、

流木にすがる人、魚を眺めた人、イルカになった人、陸を目指した人。

 

すべてがいとおしく思えた。

この世界に生きる人がたまらなく輝いて見えた。

 

このもう一つの現実で僕が見たのは人だった。

この仮の世界で、最も美しかった。

喜怒哀楽が渦巻き、どんな螺鈿よりもきらびやかだった。

 

まだ僕は漂っていたい。

流されるままに、行きつくままに。

たとえこの泡がどんな色を見せることになろうとも、

それが希釈の果てに残ったもう一つの自分であっても、

それはきっと自分で、

どこまでも自分しかいなくて、

 

 

輪郭が消える

 

 

でもきっと、それってとても素敵なことなんだと思う。

君が生きてなくてよかったなんて

最近出会った素敵な曲について書こうと思います。

 

それはこちら

www.youtube.com

 

ピノキオPの「君が生きてなくてよかった」

まずは聞いてみてほしい。

 

 

初音ミク10周年記念コンピレーションアルバム「Re:Start」収録曲なので、

聞いたことのある方も多いと思います。

 

最近ボカロなんてとんと聞かなくなってしまったのですが、

音楽サイトでランダム再生していたときに流れてきたこの曲。

 

最初は独特な曲調に惹かれてYoutubeで聞いてみようとタイトルを見た時

あの腐れ外道とチョコレトの人だから病み(闇)曲なのかと思ったら、

純粋にミクの10周年をお祝いする曲。

 

いろいろすごいところのある曲だけど、

何よりも「君が生きてなくてよかった」

というフレーズ。

 

 

魂が震える音がした。

 

 

 

ミクに感謝したり、お祝いしたりって曲は今までいくつもあったけど、

「君が生きてなくてよかった」なんて言葉がまさかこんなにいい言葉に

聞こえる日が来るとは思ってなかった。

 

だって普通こんな言葉、呪いにしかならない。

どこを見ても「生」しかない僕らには到底考えられない。

 

本当に好きなんだなって思う。

本当に愛しているんだなって思う。

それを、この愛の大きさを、「君が生きてなくてよかった」なんて。

 

かつてミクに「生」を見出そうとした人はいただろう。

 

ミクはいつもどんな時も同じ顔で、

世界がどうだろうと、自分がどうだろうと関係なくて、

まるで自分を映す鏡のような、

「個」がないから、いつでもいつまでも変わらずに。

月並みな言葉ならそんなところだろうけど、

 

どんな言葉を考えても、この曲に感じるのはもう

「君が生きてなくてよかった」

それはあまりにもありのままで。

言い換えることはできないし、必要もない。

 

 

生きてないから、歌で生を吹き込んで、

魂がないから、歌詞に思いを込めて。

 

僕もこんなに何かを愛せるだろうか。

 

 

 

あとがき;

最初なのでこんなところでしょうか。

正直まだ自分の感情を表現できる技量を持ち合わせていないことを痛感しました。

今、常に感情の昂ぶりを感じていて、

その中から今回の感動を掬い取るのは一苦労でした。

 

手始めに、ということでしたが、

次回からは人間臭いことを書いていきたいと思います。